それは体質ではなく、皮膚科で治療できる多汗症かもしれません
春から初夏にかけて、少しずつ気温が上がり、日中は汗ばむ日も増えてきます。
この時期になると、「脇の汗ジミが気になる」「服の色を選んでしまう」「ニオイが心配で人との距離が気になる」といった、脇汗に関するご相談が増えてきます。
2026年の夏は、例年より暑くなる可能性が高いと予想されています。
特に5〜7月は、東日本・西日本・近畿地方でも平年より気温が高い確率が高く、早めの暑さ対策が必要です。
2025年ほど極端な猛暑になるとは限りませんが、今年も熱中症・汗トラブル・紫外線対策を早めに意識した方がよさそうです。
ニュースやインターネットなどで、「多汗症前線」という言葉を耳にされたことはありませんか。
➔https://wakiase-navi.jp/zensen/
これは、気温の上昇とともに多汗症で受診される方が増える時期をわかりやすく表した言葉です。
桜前線のように、春から夏にかけて汗のお悩みが全国的に増えていくイメージで使われています。
もちろん、汗は体温調節のために必要な大切な働きです。
しかし、気温や運動量に見合わないほど汗が多い、日常生活に支障が出ている、人前での活動や仕事・学校生活に影響している場合には、単なる「汗かき」ではなく、原発性腋窩多汗症、いわゆるわきの多汗症の可能性があります。
「たかが汗だから」
「体質だから仕方ない」
「みんな多少は汗をかくものだから」
そう思って、一人で悩みを抱え込んでいませんか。
実際には、脇汗のお悩みは見た目の問題だけではありません。
汗ジミが気になって好きな服を着られない、制服や白衣・スーツに汗が目立つ、仕事中に何度も着替えたくなる、人と近い距離で話すことに抵抗を感じるなど、生活の質に大きく影響することがあります。
また、汗そのものだけでなく、蒸れや皮膚トラブル、ニオイへの不安が重なり、精神的な負担につながることも少なくありません。
特に脇は、汗腺が多く、衣類で覆われて蒸れやすい部位です。
そのため、汗が多い方では、汗ジミやベタつき、ニオイ、かぶれなどを感じやすくなります。
市販の制汗剤やデオドラントで一時的に対策できる場合もありますが、それでも日常生活に支障がある場合には、医療機関での治療を検討することが大切です。
原発性腋窩多汗症は、皮膚科で診断・治療が可能な疾患です。
現在は、脇汗を抑えるための外用薬など、保険診療で使用できる治療選択肢もあります。
症状の程度や生活への影響、患者様のご希望に合わせて、治療方法を選んでいくことができます。
大切なのは、「汗の量」だけで判断するのではなく、
どのような場面で困っているのか
どのくらい生活に支障が出ているのか
どのような状態を目指したいのか
を一緒に確認していくことです。
汗の悩みは、なかなか周囲に相談しづらいものです。
しかし、毎日の生活の中で繰り返し感じる不快感や不安は、決して小さな問題ではありません。
「汗ジミが気になって外出が憂うつ」
「人前で腕を上げるのが不安」
「仕事や学校で汗が気になって集中できない」
このようなお悩みがある場合は、一度皮膚科でご相談ください。
当院では、脇汗のメカニズムや多汗症の特徴をわかりやすくご説明し、患者様お一人おひとりの生活背景やお困りごとに合わせて、治療方法をご提案しています。
セルフケアでできる対策から、医療機関で行う治療まで、無理なく続けられる方法を一緒に考えていきます。
汗の季節を少しでも快適に、自分らしく過ごすために。
「脇汗は仕方ない」とあきらめる前に、ぜひお気軽にご相談ください。
目次
脇汗のメカニズムと3つの原因
人間の体には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」という2種類の汗腺があり、脇の下にはどちらも存在しています。
- エクリン汗腺: 全身にあり、主に体温調節のために水のような無色無臭のサラッとした汗を出します。
- アポクリン汗腺: 脇などに多く存在し、タンパク質や脂質を含んだ白っぽくベタベタした汗を出します。この汗が皮膚の常在菌に分解されると、特有のニオイの原因になります。
人が汗をかく要因には、大きく分けて以下の3つがあります。
- 温熱性発汗: 暑いときや運動時に、体温を下げるためにエクリン汗腺からかく汗です。
- 精神性発汗: 緊張やストレス、不安を感じたときに、自律神経(交感神経)が刺激されてかく汗です。アポクリン汗腺からも分泌されやすく、ニオイを伴うことがあります。
- 味覚性発汗: 辛いものなどを食べたときの刺激によってかく汗です。
もしかして「多汗症」?セルフチェック基準
暑くもなく緊張もしていないのに大量の汗が出たり、脇汗のせいで「好きな服が着られない」「人目が気になって仕事や勉強に集中できない」など、生活に支障が出ている場合は「多汗症」かもしれません。
原因不明の過剰な脇汗が半年以上続いており、以下の6項目のうち2項目以上当てはまる場合は、多汗症と診断される目安となります。
- 初めて症状が出たのが25歳以下である
- 左右対称に多汗がみられる
- 睡眠中は発汗が止まっている
- 1週間に1回以上、多汗で困ることがある
- 多汗によって日常生活に支障をきたしている
- 家族や親族に多汗症の人がいる
今日からできる!脇汗・ニオイのセルフケア
まずは、日常生活の中で取り入れられる対策をご紹介します。
通気性・吸水速乾性の良いインナーと脇汗パッドの活用
綿や麻、シルクなどの天然素材や吸水速乾機能のあるインナーを選ぶと、汗がこもりにくくニオイの発生を抑えられます。服への汗ジミを防ぐには、脇汗パッドや汗取りパッド付きのインナーが非常に有効です。
制汗剤とデオドラントの使い分け
汗の量を抑えたい時は制汗剤、ニオイを防ぎたい時は殺菌成分の入ったデオドラント剤を使い分けましょう。塩化アルミニウム配合のものは、汗腺の出口を一時的にふさぐ高い効果が期待できます。
生活習慣と食生活の見直し
自律神経の乱れを整えるため、十分な睡眠とリラックスできる時間(ぬるめのお湯での入浴など)を持ちましょう。また、ニオイを強くする動物性脂肪や、発汗を促す辛い食べ物(刺激物)の過剰摂取は控えるのがおすすめです。
こまめに汗を拭き取る・冷やす
雑菌が繁殖する前に、少し湿らせたタオルや汗拭きシートで優しく拭き取りましょう。首の後ろや脇の下を保冷剤などで冷やしたり、深呼吸をしてリラックス(副交感神経を優位に)させたりするのも効果的です。
皮膚科で受けられる脇汗治療リスト
セルフケアや市販品では改善しない場合、皮膚科では以下のような専門的な治療が可能です。
身体的・経済的負担の小さい保険適用の治療も増えています。
① 塗り薬・拭き取りシート(外用薬)
まずは手軽に始められる外用薬からスタートすることが一般的です。
- 外用抗コリン薬(保険適用): 脇に直接塗ることで、汗腺に伝わる「汗を出しなさい」という神経の指令をブロックし、脇汗を抑える治療です。毎日継続して使用することで効果が期待できます。飲み薬に比べて全身への影響は比較的少ないとされていますが、皮膚のかぶれや刺激感、口の渇きなどが出ることもあるため、医師の指示に沿って使用することが大切です。
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- エクロックゲル: 日本初の保険適用塗り薬で、1日1回塗布します。12歳以上から処方可能です。
- ラピフォートワイプ: 1回使い切りの拭き取りシート状で、衛生的かつ簡便に使用できます。9歳以上から処方可能です。
- エクロックゲル: 日本初の保険適用塗り薬で、1日1回塗布します。12歳以上から処方可能です。
※どちらも抗コリン薬の性質上、緑内障(閉塞隅角)や前立腺肥大症の方には使用できない点に注意が必要です。
- 塩化アルミニウム製剤: 汗を分泌する汗腺の出口に一時的な栓を作ることで、汗が皮膚表面に出てくる量を抑える外用薬です。脇だけでなく、手のひらや足の裏の多汗に使用されることもあります。継続して使用することで発汗を抑える効果が期待できますが、刺激感、赤み、かゆみ、かぶれなどが出る場合があるため、皮膚の状態を見ながら使用することが大切です。
② 注射薬(ボツリヌス毒素製剤注射)
毎日のケアの手間を省きたい方や、より確実な効果を長期間得たい方におすすめです。
神経の末端から分泌される「アセチルコリン」を抑制し、汗腺への指令をブロックして汗を抑えます。施術は5〜10分程度と短く、ダウンタイムもほとんどありません。効果は注射後数日〜1週間で現れ、約3〜6ヶ月(ワンシーズン)持続します。一定の基準を満たす「重度の原発性腋窩多汗症」と診断された場合は、保険適用で治療が可能です。
③ 飲み薬
内服抗コリン薬(保険適用):飲み薬として体内に吸収され、全身の汗を出す神経の働きを抑えることで、発汗を軽減する治療です。汗は、神経から汗腺へ「汗を出しなさい」という指令が伝わることで出ますが、抗コリン薬はその指令に関わる働きをブロックします。脇だけでなく、手のひらや足の裏など、広い範囲の汗に効果が期待できる一方で、口の渇き、便秘、眠気、尿が出にくい、目のかすみなどの副作用が出ることがあります。そのため、症状や体質、持病などを確認しながら、医師の判断のもとで使用します。
④ その他の治療
- イオントフォレーシス: 手のひらや足の裏を水に浸し、微弱な電流を流すことで汗腺の働きを抑える治療です。主に手足の多汗症に用いられ、注射や手術をせずに発汗を軽減できる方法ですが、効果を保つには継続的な治療が必要です。
- 医療機器(ミラドライ): 皮膚を切らずにマイクロ波(電磁波)を照射し、汗腺の機能を破壊します。破壊された汗腺は再生しないため、半永久的な効果が期待できます。
- 外科的手術:多汗症の外科的治療には、主に以下の2つの方法があります。
外用薬や注射などで十分な効果が得られない重症例や、より根本的な治療を希望される場合に検討されます。
- 交感神経遮断術
汗を出す指令を伝える「交感神経」を外科的に遮断する手術です。
- 特徴: 他の治療で改善が乏しい重症例において、患者さんの強い希望がある場合に検討されます。条件を満たせば保険適用となることがあります。
- 注意点: 手術にはリスクが伴うため、現在は外用薬やボトックス注射など、負担の少ない治療から始めることが一般的です。
- 汗腺を直接取り除く手術
脇を小さく切開し、発汗やニオイの原因となる汗腺を直接取り除く方法です。
- 特徴: 脇のシワに沿って小さな傷口を作り、専用機器で汗腺にアプローチします。
- メリット: 汗腺を処理することで、脇汗やワキガの改善が期待できます。長期的な効果を希望される方に向いています。
- ダウンタイム: 腫れや内出血、痛みなどが出ることがあり、一定のダウンタイムを伴います。
外科的治療は効果が期待できる一方で、身体への負担や合併症のリスクもあります。
まずは塗り薬やボトックス注射などの治療を行い、それでも改善が難しい場合に、専門医と相談しながら検討することが大切です。
まとめ:一人で悩まず、まずは皮膚科へご相談を

脇汗は決して「体質だから」と諦める必要はありません。
近年は多汗症の認知度も高まり、病院で汗の悩みを相談することが当たり前の時代になってきています。また、お子様が治療を受ける場合、お住まいの市区町村によっては「子どもの医療費助成制度」などで自己負担額が助成されることもあります。
「市販の制汗剤が効かない」「服選びに困っている」など、日常生活で少しでもストレスを感じているなら、ぜひ一度当院へご相談ください。患者様の症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法をご提案し、汗を気にせず快適に過ごせる毎日を一緒に目指しましょう。
多汗症の治療はまつもと皮膚科クリニックへ
https://matsumoto-hifuka-clinic.com/dermatology/hyperhidrosis/ - 交感神経遮断術

