乾癬|まつもと皮膚科クリニック|福知山・丹波・丹波篠山市の皮膚科・美容皮膚科

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乾癬 PSORIASIS

乾癬

乾癬とは、一般的に尋常性乾癬を指します。
全身のいろいろな場所に、皮膚が赤くなってもり上がったり、表面に銀白色の「かさぶた」のようなものができて、ポロポロとはがれ落ちたりします。症状が良くなったり悪くなったりをくり返しながら慢性的に経過します。乾癬にかかると、皮膚が赤くなって(紅斑)、もり上がり(浸潤)、その表面に銀白色のかさぶた(鱗屑)が厚く付着して、それがフケのようにぼろぼろとはがれ落ちる(落屑)という症状が起こります。鱗屑を無理にはがすと、出血することもあります。かゆみには個人差があり、全くみられない人もいれば、強いかゆみが起こる人もいます。症状が進むと病変部(皮膚症状があらわれている部分)の数が増え、互いに融合して大きくなります。
また、手足の爪が変形することもあります。
爪も病変が生じ、白く濁り、表面が凸凹としてきます。このような皮膚症状のほか、関節の痛み、赤み、腫れや変形、ときに発熱や全身倦怠感を訴える場合もあります。
頭皮や髪の生え際、肘、膝など擦れるなどして刺激を受けやすい部位でよくみられますが、それ以外の部位にも発疹が出ることがあります。日本人は1000人に1人くらいで、女性は若い時に、男性は中年以降に発症します。日本乾癬学会の統計によると、10歳未満の発症が4%、10~19歳での発症が12.2%であり、子どもでも発生します。
症状は良くなったり悪くなったりしますが、一般的に夏に症状が軽くなり、乾燥しやすい冬に症状が悪化する傾向があります。

乾癬は症状によって
次の5つに分類されます

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)(局面型乾癬)

約90%を占めるタイプの乾癬です。1つひとつの皮疹が大きくなって互いにくっつくと、局面を形成するので、「局面型乾癬」とも呼ばれています。

乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)(関節症性乾癬)

皮膚症状に加え、関節に痛みや変形などがあらわれます。
少し関節が腫れているだけの軽い人から、手足の指、背骨、腰などの関節が変形し、日常生活に支障のある人まで個人差があります。関節炎を生じた関節では、強い炎症によって腫れや強い痛みが起きるばかりでなく、骨が少しずつ壊され、やがて変形していきます(関節破壊)。

滴状乾癬(てきじょうかんせん)

風邪や扁桃炎などに引き続いて、全身に滴状(米粒大~大豆大くらい)のカサカサした落屑を伴う紅斑が急速に出現します。

乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)

皮膚症状が全身に拡大した状態で、全身の90%以上が真っ赤になります。皮膚の働きが損なわれるため、体温調節ができなくなり、発熱や倦怠感を生じます。ときに入院が必要となります。

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

通常の乾癬の症状の中に、膿疱(白または黄色い膿をもった発疹)ができます。高熱、全身のむくみ、関節痛、倦怠感などがみられ、入院による治療が必要となる場合もあります。

原因

乾癬ができるメカニズム

乾癬の皮膚では、表皮の新陳代謝のサイクルが短くなり、角化細胞(垢となって落ちる細胞)が鱗屑となってはがれ落ちます。これに加え、炎症によって皮膚が赤くもり上がります。
皮膚の最も外側は、表皮と呼ばれる薄くて丈夫な層で覆われており、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入するのを防ぐなどの働きをしています。正常な皮膚では通常、表皮細胞が約45日のサイクルで新陳代謝をくり返しています。
乾癬患者さまの皮膚ではそのサイクルが正常な皮膚の10分の1(4~5日)くらいに短くなり、角化細胞が鱗屑となって重なり、たまって、はがれ落ちます。
また、白血球などの血液成分やTNFα(炎症を引き起こす体内物質)が増えるため、皮膚が赤くもり上がったり、かゆみが起こります。

乾癬の原因については、まだ完全には解明されていません。
乾癬になりやすい体質があり、そこに感染症や精神的ストレス、薬剤、物理的な刺激などのさまざまな要因が加わって発症すると考えられています。遺伝的な要因の有する患者さんに外部からの何らかの要因(感染や精神的ストレス、薬剤、物理的な刺激など)が加わり、免疫異常が生じ炎症が起きることが判ってきました。
糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、肥満なども影響するといわれています。最近の研究で、乾癬患者さまの病変部では、表皮の異常だけでなく免疫系にも異常が生じ、炎症が起きていることがわかってきました。

免疫とは、私たちの身体を細菌やウイルスなどの異物から守るための防御システムです。
しかし、何らかの要因(遺伝的な要因〔体質〕、外部から加わった要因)でこのシステムが正しく機能しなくなると、反対に身体を攻撃する方向に働き、病気や炎症を引き起こす原因となってしまいます。
最近、このような炎症を起こす物質がいくつか判明しましたが、そのかなでTNF-αと呼ばれる生体内物質があります。TNF-αは乾癬の病変部に多量に存在し、それ自身が炎症を起こしたり、乾癬炎症を引き起こす樹状細胞を活性化したりします。
さらに、IL-23という樹状細胞からヘルパーT細胞活性に作用する炎症性サイトカインやIL-17が乾癬の発症に関与することが判ってきております。乾癬は、他人に感染することはありません。

乾癬の診断

乾癬ではアウスピッツ現象が特徴的で、分厚くなった垢を無理にはがすと点状に出血します。
また、乾癬では病変がでていない皮膚をこする、ケガをするなどすると新しく病変がでるケブネル現象があり、悪化させる要因になります。特徴的な皮膚の病変やアウスピッツ現象やケブネル現象など症状の経過で診断することができます。

ほかの病気の可能性を考える場合には病変を顕微鏡でみる病理組織検査や採血検査などを追加していきます。
乾癬関節炎がある場合にはリウマチと区別するのが難しく、関節のレントゲンやエコー検査などもおこないます。

日常生活の注意点

乾癬は症状をコントロールしながら、うまく付き合っていくことが大切です。
乾癬そのものを完治させるのは難しいですが、食生活を見直す、体重を落とす、たばこをやめる、などの生活習慣の改善でも治療の効果が現れやすくなったり、乾癬の症状そのものが良くなったりするといわれています。

注意点

食事はバランス良く

厳密な食事制限は必要ありませんが、カロリーの高い食事は悪化要因となります。また、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、肥満なども乾癬の発症や悪化と関連していることが報告されています。暴飲暴食はやめて、カロリーや脂質を控えて、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。

肉類や脂肪分の摂りすぎは、乾癬を悪化させることがあるといわれています。肉類より魚類(特に青魚)を積極的に摂るようにし、揚げ物や、油を多く使った炒め物は控えめにしましょう。また、刺激の強い食品は避けましょう。香辛料などの刺激物、熱いスープなどは、かゆみを誘発したり強めたりすることがあります。飲酒もかゆみが増すきっかけになりますので、控えめにしましょう。

きずを作らないようにしましょう

掻き傷、切り傷、やけど、虫さされ、靴ずれ、カミソリ負けといったささいな傷や、衣服、メガネなどとの摩擦による刺激でも、新たな皮疹が誘発される(ケブネル現象)ことがあります。新たに傷をつくったりしないように注意しましょう。

感染症にかからないように体調管理をしましょう

風邪や扁桃腺炎などの感染症にかかると、乾癬が再発したり、症状が悪化することがあります。手洗いとうがいを励行し、体調管理に気を付けましょう。

持病の治療もしっかりと

乾癬患者さまには、糖尿病、高血圧、高脂血症、リウマチ性疾患、痛風、扁桃腺炎、腎炎、肝炎などを患っている人が多い傾向があります。
これらの病気が悪化すると乾癬の症状も悪化することがあるので、持病や合併症もあわせて治療していくことが大切です。

ストレスをためないようにしましょう

仕事や対人関係の悩み、家庭内のトラブルなど、さまざまなストレスが発症・悪化の引き金となります。乾癬そのものに対する悩みや不安がストレスとなり、悪化させるという悪循環も起こります。
趣味を持ったり、散歩やスポーツで気分転換を図ることなども効果的です。

タバコはやめましょう

タバコを吸うとのどを痛め、乾癬の悪化要因である風邪や扁桃腺炎などにかかりやすくなります。

規則正しい生活を送りましょう

不規則な生活や睡眠不足も悪化要因です。
十分な睡眠と食事の時間を心がけ、規則正しい生活を送るようにしましょう。

かゆくても掻かないようにしましょう

かゆいと掻きたくなりますが、ケブネル現象を起こすことがあります。なるべく掻かないようにし、爪はこまめに切るようにしましょう。

長風呂や熱めのお湯は避けましょう

長時間の入浴や熱めのお湯は、かゆみが増します。ぬるめの温度にし、できるだけ長時間の入浴は避けましょう。

お風呂でゴシゴシ洗うのは厳禁です

お風呂でゴシゴシ洗ってこすりすぎるとケブネル現象を起こし、症状を悪化させてしまいます。ナイロンタオルは控え、せっけんをよく泡立てて手でやさしく洗いましょう。入浴後はしっかりとお肌の保湿をしましょう。

肌に刺激のある服は避けましょう

衣服が肌にこすれると悪化の要因になりますので、ゆったりとした余裕のあるものを身につけましょう。肌に直接触れる衣服や寝具のカバーなどは、綿などの柔らかく刺激の少ない素材を選びましょう。

治療方法

外用療法(塗り薬)

乾癬の治療方法は、患者さまのライフスタイルやその時の症状に応じて外用療法や内服療法、光線療法、抗体療法から治療効果と副作用などを考慮して選択されます。
そのため、皮膚科を受診して適切な治療を受けることが大切です。乾癬の治療のアプローチには主に、「紅斑の主な原因である炎症を抑えること」と、「鱗屑の主な原因である皮膚の細胞が過剰に作られることを抑えること」の2つがあります。

ステロイド外用薬~炎症を抑える~

乾癬により、活発になった白血球の活動や血管の拡張を抑えることで皮膚の炎症を抑制する作用があります。
効果の強さによって5段階に分けられ、症状に応じて使い分けます。特に紅斑の改善に効果的です。効果は比較的早く現れますが、長期間にわたり漫然と使用すると、皮膚が薄く弱くなる(皮膚萎縮)、毛細血管が拡張するなどの副作用を生じる場合もあります。

頭皮の塗り薬によるべたつきが気になるかたには、2017年に発売されたコムクロシャンプー0.05%(マルホ株式会社)による治療がおすすめです。コムクロシャンプーはクロベタゾールプロピオン酸エステルという最も強いランクのステロイドを含んだシャンプーで、髪を洗う15分前に薬を塗り、15分後に洗い流すことで治療になるという画期的な薬剤です。

その他の頭部尋常性乾癬や頭部湿疹・皮膚炎でお困りのかたにもご使用いただくことができます。

ビタミンD3外用薬
〜皮膚の細胞が過剰に作られることを抑える〜

ビタミンD3には、皮膚の細胞が過剰に作られるのを抑え、正常な皮膚に導く作用があります。
特にフケのように剥がれ落ちる鱗屑や、皮膚の盛り上がりの改善に効果的です。ステロイド外用薬に比べ、ゆっくりと効果が現れる薬剤ですが、一度症状が良くなれば、その状態を長期間保つことができます。
ビタミンD3外用薬は、塗った部位に軽い刺激感などを生じることがあります。また、一度に所定の量より多く塗ると、血液中のカルシウムが増えすぎて二日酔いのような症状が出ます(高カルシウム血症)。のどの渇き、脱力感、食欲不振などの全身性の副作用が起こることがありますので、医師の指示に従って薬を塗る必要があります。
重篤な副作用として腎不全の症状(尿の減少・むくみ)や高カルシウム血症(だるい・食欲低下・吐き気)の症状が見られる場合があります。まれな副作用ではありますが、使用する量が多いかたや腎機能に不安があるかたは時々血液検査を受けておくと安心して治療を継続できます。
皮膚の増殖を抑えるのが主な効き目ですが、IL-17という乾癬の皮膚症状に重要な役割を果たすタンパクを作りにくくすることにも役立ちます。

ステロイドとビタミンD3の配合外用薬~炎症と皮膚の細胞が過剰に作られることを抑える~

ステロイドとビタミンD3の2つの成分を配合しています。

1日1回の外用で、ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬を単独で使うより高い効果が認められます。
副作用については、ステロイドがビタミンD3による刺激感を、ビタミンD3がステロイドによる皮膚萎縮を、お互いに抑えあう可能性が報告されています。

しかし、一度に所定の量より多く塗ると、のどの渇き、脱力感、食欲不振などの全身性の副作用が起こることがあります。外用療法は関節症状に対する効果はありません。

光線療法(紫外線照射)

乾癬の症状は、一般的に紫外線が強くなる夏に良くなる傾向があります。
光線療法は紫外線の免疫反応を抑える作用を利用しています。光線療法の作用機序は、病因となる細胞が取り除かれる(アポトーシスに陥る)点と制御性T細胞の誘導などが考えられています。
塗り薬だけでは良くならないときや、発疹の面積が広くなったときに、光線療法が用いられます。光源ランプを用いて発疹に直接紫外線をあて、過剰な免疫反応を抑えます。
紫外線には波長によって種類がありますが、効果が認められるのは、中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)です。
寛解導入、すなわち週2~3回程度の細かい間隔で照射し、ぶつぶつをできるだけ消失させるのを最初の目的としています。効果が出て皮膚症状が寛解したら間隔をのばしていく、ないし中止します。

中波長紫外線療法(UVB)

現在広く使用されているのは、「ナローバンドUVB療法」です。ナローバンドUVB療法では全身に紫外線を照射しますが、発疹のみに照射する「ターゲット型エキシマランプ」もあります。

長波長紫外線療法(UVA)

UVAは、光に対する感受性を高める薬剤を飲んだり塗ったりしてから照射する「PUVA療法」に用いられます。

〜光線療法の副作用〜日焼け・色素沈着

実施するのに定期的な通院(1週間に1回程度)が必要になります。

普段から適度に日光を浴びることも推奨されています。ただし、過度な日光浴は逆に乾癬を悪化させたり、皮膚がんの原因となったりすることもありますので、日焼けのし過ぎは禁物です。光線療法は関節症状に対する効果はありません

内服療法(飲み薬)

乾癬の治療に用いられる飲み薬には、主に次の4種類があります(保険適用)。

ビタミンA誘導体(エトレチナート:チガソン®)

表皮の角化異常を抑え、正常な表皮を再形成します。

主な副作用として、手足の落屑、口唇炎が生じることがあります。また、胎児に影響を与えるおそれがあるため、服用中止後も、男性は6ヵ月、女性は2年間の避妊が必要です。

免疫抑制剤(シクロスポリン:ネオーラル®)

免疫担当細胞(Tリンパ球)に対して作用し、過剰な免疫反応を抑える働きがあります。

効果は比較的速やかで、量を多くすると生物学的製剤に近いくらいの効果を得ることもできます。
主な副作用として血圧上昇、腎機能障害、多毛などが生じることがあるため、服用中は定期的な血圧測定、血液検査が必要です。

PDE4阻害剤(アプレミラスト:オテズラ®)

過剰な免疫反応を抑える

乾癬治療における世界初の経口ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害剤で、免疫を調整する薬剤です。PDE4はサイクリックAMP(cAMP)に特異的なPDEで、主に炎症性細胞に分布しています。PDE4を阻害することにより細胞内cAMP濃度を上昇させ、IL-17、TNF-α、IL-23及び他の炎症性サイトカインの産生を制御することにより炎症反応を抑制します。
乾癬の病態にはホスホジエステラーゼ4(PDE4)の過剰な発現や、それに伴う炎症性サイトカイン(炎症反応に関わる化学物質)の大量産生が関与していると言われています。これに対しオテズラはPDE4の働きを阻害することで炎症性サイトカインの産生量を調節し、皮膚の炎症を抑制する働きがあります。
副作用として、悪心・吐き気や下痢、頭痛などが生じる場合があります。お薬に体を慣らしていくためのスターターパックがあります。副作用は使っていくうちになれてくることが多く、長期的に内服すると体重減少の副作用もあります。効果はゆっくり出てくるので、焦らず治療することが大切です。痒みや関節の痛みにも効果があります。
注射薬のような劇的な効果ではないですが、症状が軽くなるので塗り薬をぬるのが面倒なかた、小さな発疹がたくさん出ているかたには向いています。腎障害は軽度で使用しやすい薬剤です。

チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害剤(デュークラバシチニブ:ソーティクツ®)

過剰な免疫反応を抑える。
世界初となる経口投与可能なチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害剤です。「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬および乾癬性紅皮症」の適応症を持つ1日1回の飲み薬です。
TYK2は細胞外からの刺激シグナルを細胞内に伝達するために働くリン酸化酵素(キナーゼ)群のひとつであるヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子で、乾癬を含む自己免疫疾患の病態に寄与するインターロイキン(IL)-23、IL-12、I型インターフェロンなどの炎症性サイトカインの受容体に結合して下流にシグナルを伝達する役割を担っています。ソーティクツは、TYK2(チロシンキナーゼ2)阻害薬と呼ばれ、これまでの飲み薬とは異なる作用をもつ乾癬の治療薬です。
乾癬には、Ⅰ型IFN,IL-23,IL-17,TNFαと呼ばれる様々なサイトカイン(炎症性物質)が関与しています。TYK2は、Ⅰ型IFN、IL-12,IL-23のサイトカイン受容体からの炎症シグナルを細胞核伝える役割を担っております。TYK2阻害することで、乾癬に関係するサイトカインを抑え、各種症状に効果があります。また、既存のJAK阻害剤とは異なる作用機序を有しており、TYK2への選択性を高める工夫がなされております。

抗リウマチ薬(メトトレキサート:リウマトレックス®)

メトトレキサートは長年関節リウマチの治療薬として使われていましたが、乾癬の治療薬として承認されました。葉酸の働きを抑え、炎症症状を鎮めます。

乾癬性関節炎で使用されることが多く、免疫細胞の増殖を抑えることにより、関節炎の進行や破壊を抑制する効果があります。時に肝機能障害、消化管障害、間質性肺炎を生じることがあります。定期的な血液検査が必要です。女性は内服終了後、少なくとも1月経周期、男性は少なくとも3ヵ月間は避妊が必要です。妊娠計画の少なくとも3ヵ月前から男性、女性とも内服を中断しなければなりません。

腎機能障害のあるかたには使用できません。副作用対策として葉酸製剤を内服することがあります。

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(ウパタシチニブ:リンヴォック®)

細胞内でのJAK(ヤヌスキナーゼ)と呼ばれるシグナル伝達部をブロックします。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)に適応があります。
帯状疱疹のリスクが高まることが知られていますので、この治療を検討されている方は事前に帯状疱疹ワクチンの接種を強くおすすめしています。深部静脈血栓症、肺塞栓症といった血栓のリスクが高まります。そのための注意が必要になります。また、生物学的製剤と同様に結核を事前に検査する必要があります。

PDE4阻害薬

免疫にかかわる細胞に存在する酵素の働きを抑え、過剰に発現している炎症を起こす物質の生産を抑える働きがあります。


免疫抑制薬

乾癬で過剰に働いている免疫反応を抑えます。


ビタミンA誘導体

皮膚の細胞が過剰に作られることを抑えます。

リスク・副作用

リスク

PDE4阻害薬:頭痛、吐き気、下痢など
免疫抑制薬:血圧の上昇、腎機能低下
ビタミンA誘導体:口唇炎や手足の皮めくれ、精子を作る機能や胎児に影響を与える恐れがあるため、服用中と内服中止後も男性は6ヵ月、女性は2年の避妊が必要です。

生物学的製剤(注射または点滴)

次に示す16歳以上の成人で、全身療法を考慮する重症例が対象になります。

1.尋常性乾癬で、既存の全身療法(光線療法や免疫抑制薬のシクロスポリン、難治性の角化異常症の治療薬のレチノイドの内服など)で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者さま。

2.難治性の皮疹、関節症状又は膿疱を伴う患者さま。

塗り薬や飲み薬など、これまでの治療で十分な効果がみられない患者さんには「生物学的製剤」が用いられます。生物学的製剤は、乾癬の症状が出ている部位の、炎症にかかわるたんぱく質(サイトカイン)の働きをピンポイントで抑えて症状を改善します。乾癬を引き起こすサイトカインを直接抑制するため高い効果が期待でき、皮膚症状だけでなく、関節症状にも効果があります。一方で、これらのサイトカインは体を守る免疫の働きもあるので、生物学的製剤で働きを抑えることにより、風邪などの各種感染症にかかりやすくなる可能性が高くなります。

高い臨床効果の一方、免疫を抑えることによって副作用を生じて細菌性肺炎や肺結核など重篤な感染症の発現に注意が必要です。

TNF-α阻害薬:TNFαの働きを抑える(ヒュミラ:レミケード)

「TNF」は健康な人の体内にも存在するたんぱく質の一種で、免疫や炎症、痛みの発現に関与する因子です。
TNFは体を守るうえで欠かせない因子ですが、過剰になると炎症をまねくなどの悪影響が生じてきます。TNFにはいくつか種類がありますが、TNF-α阻害薬は炎症を引き起こすTNFαの働きを抑え、皮疹や関節症状などを改善します。

~TNF阻害薬が適したかた~
・乾癬性関節炎で、とくに関節の症状が強い人

・メタボ気味の人

・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とかクローン病)の既往がある人

~TNF阻害薬が使えないかた~

・うっ血性心不全のあるかた

・多発性硬化症などの脱髄性疾患をお持ちのかた

・うっ血性心不全(NYHA3度以上)のかた

IL17阻害薬:IL-17Aの働きを抑える(コセンティクス・ルミセフ・トルツ)

IL-17Aは乾癬の免疫反応に深く関係する炎症性サイトカインのひとつです。

L-17は乾癬の皮膚症状が起きる最終段階で皮膚症状の形成に深く関与しています。そのため、IL-17の働きを抑えることは乾癬の症状が出るのを最終段階で抑える効果があります。

したがって、免疫反応を幅広く抑えてしまうことを避けられるので大きな副作用が少ないばかりか、治療効果が高く、効果が比較的早く出ると言われています。

IL-23阻害薬:IL‐23p19の働きを抑える(トレムフィア・スキリージ・イルミア)

IL-23p19はIL-17と同様、「炎症性サイトカイン」のひとつです。IL-23p19は免疫反応で働く樹状細胞から産生されます。
乾癬では免疫システムが異常を起こしているため、樹状細胞がIL-23を過剰に産生します。IL-23はリンパ球を刺激して乾癬の皮膚や関節の症状を引き起こすIL-17を多く産生させます。つまり、乾癬の発症においてIL-23はIL-17の上流で働いています。
トレムフィアはIL-23p19に限定して働きを抑えるため、T細胞の分化に影響を与えることなく乾癬の症状を抑えることができます。

~IL-23阻害薬が適応しているかた~

・治りにくい尋常性乾癬
・仕事が忙しくて通院が大変なかた
・自分で注射を打つのが怖いかた

顆粒球吸着除去療法

“難病指定”に認定されている“膿疱性乾癬”に使われる治療です。
アダカラムという特殊な体外循環装置を使い、乾癬に関わる白血球の一部である、活性化した“顆粒球”と呼ばれる白血球細胞を選択的に血液中から除去して、症状を軽減させます。
膿疱性乾癬に保険適応があります。薬剤の投与をしないため、妊娠中でも実施できます。当院では実施できません。

よくあるご質問

Q

乾癬は人にうつりますか?

A

乾癬は人にうつることはありません。乾癬は感染する病気ではなく、患者さまの発疹に触れても、温泉やプールに一緒に入っても、他の人にうつることはありません。
乾癬になりやすい体質は遺伝すると考えられていますが、乾癬の家族内発症頻度は5%程度といわれています。

Q

妊娠を希望しています。乾癬の治療はできますか?

A

妊娠を希望する患者さまの症状と、治療による効果と副作用などのリスクを十分検討し、治療を進めていきます。乾癬の治療薬の中には妊娠や授乳に影響を与える可能性がある薬剤もあります。妊娠および子供を産む希望がある場合は、主治医に伝えておくことが大切です。

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