アトピー性皮膚炎

生まれつきアレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)を持っているかたに多くおこります。
かゆみのある湿疹が慢性的に良くなったり、悪くなったりを繰り返す皮膚病です。左右対称に出やすく、年齢によって好発部位が異なります。乳児期には頭や顔に多く、幼小児期には、徐々に体や四肢に広がります。特に関節部分にでやすい傾向があります。思春期・成人期には顔・首・胸・背中・ひじなどの上半身にでやすいと言われています。
乳児で2ヵ月以上、幼児から成人は6ヵ月以上症状が続くと、アトピー性皮膚炎と診断されます。
また、血液検査において、血清IgE値や末梢血好酸球数、血清TARC値などの値が上がってくるため重症度を決める参考となります。
アトピー素因とは?
つまり、アレルギーを起こしやすい体質のことです。
➀本人または家族がアレルギー性の病気(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、結膜炎など)を持っている。
②アレルギーと深い関係がある免疫物質「IgE抗体」を産生しやすい体質を持っている。
皮膚炎の状態が軽い場合には総IgE値は低い値になることが多いとされています。
原因
人間の皮膚にはバリア機能があり、外からの刺激や雑菌などの外敵が体内に入り込まないようにしたり、また体内から水分などが漏れ出ないように守ってくれています。
皮膚は三層構造から成り、外側から表皮、真皮、皮下組織と言う構造をしています。表皮の最も外側にある「角層」がこのバリア機能を担っています。
アトピー性皮膚炎の患者さまの皮膚は、このバリア機能が低下しており、角質の細胞の間を埋めている角質細胞間脂質や水分を保つ天然保湿因子が減ってしまい、その結果、角層のバランスが崩れ、外から様々な刺激やアレルゲンが侵入しやすくなっています。
アレルゲンが皮膚から侵入すると、それを攻撃し、体の外に追い出そうとする免疫細胞と結びつき、ヒスタミンという物質を出すことで炎症が起こります。
また掻きこわしによってバリア機能が低下した肌は、かゆみを感じる神経が皮膚の表面まで伸びてきて、ちょっとした刺激でも痒みが起こりやすい状態のため、さらに掻いてしまい、よりバリア機能が破壊されるという悪循環に陥りやすくなります。
遺伝的な体質に加えて、乾燥・汗・掻き動作・ストレスなどが誘因となって悪化します。アトピー性皮膚炎を悪化させる要因は、1つの要因だけでなく、様々な要因が組み合わさって起こることが多いです(多因子性)。これらの悪化要因の対策を行うことが大切です。

要因
体質に関する要因
・アトピー素因
・肌のバリア機能低下
環境に関する要因
➀アレルゲン(アレルギー症状の原因となる物質):食物、ダニ、ほこり、カビ、花粉、動物の毛・ふけ
②アレルゲン以外の刺激:汗、衣類の摩擦、乾燥、引っ掻き傷、洗剤、化粧品
③その他:寝不足、過労、ストレス、感冒
皮膚炎が悪化するきっかけは積極的に治療が出来ていないことがほとんどです。職場や日常生活の環境が関与することもあります。
当院では、アレルギー症状を起こしやすい41種類のアレルゲンに対して、指先のわずかな採血検査でアレルギーを調べることが可能です。
日常生活の注意点

スキンケア
アトピー性皮膚炎は良くなったり、悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚病です。普段からの定期的な治療に加えて、スキンケアがとても重要です。皮膚の清潔を保ち、うるおいのある状態を保ちましょう。
具体策
・汗やほこりをその日のうちになるべく早くにしっかり洗い流す
・一年中しっかりと保湿を行う
・洗う時は、ぬるま湯で肌を湿らせ、熱い湯は避けましょう
・洗浄料はよく泡立ててやさしく洗う
・お風呂でのこすりすぎ・洗いすぎは❌
・洗いながら掻かないように意識しよう。
・入浴は手で体を洗う
・お湯の温度は38~40℃が最適
・湯船は最低5~10分つかる
・毎日全身に石鹸をつけない
・洗った後は、十分に保湿を。
・強くこすらずに、手の平で皮膚全体に広く伸ばすようにやさしく塗りましょう。
・刺激を避ける
・木綿100%の下着や衣服を身につける
・紫外線に注意し、日傘や帽子で直射日光を避けましょう。
・日焼け止めを年中塗りましょう。
・スキンケア用品・化粧品は、敏感肌用の物を選びましょう。
症状によっては、ファンデーションを控えて、ワンポイントメイクにとどめておきましょう。
悪化要因に対する対策
身の回りの環境整備をしましょう。身の回りの環境中の悪化因子を見つけ、可能な限り悪化因子を取り除きましょう。
具体策
・ぬいぐるみ・カーペットを除去する。
・ぬいぐるみは時々洗い、天日干しする。
・部屋の通気をよくする。こまめに空気の入れ替えを。湿気対策をする。
・畳やカーペットよりフローリングにする。
・布製のソファより皮製のソファにする。
・布団は天日干しか布団乾燥機で乾燥後に掃除機でダニの死骸を除去する。
・枕カバーやシーツのこまめな洗濯を(防ダニ加工が良い)。
・加湿器を利用して部屋の湿度を保つ。湿度60%を超えるとカビやダニが発生しやすくなります。
・湿度40~60%、室温20~25℃が理想
・綿の素材が直接肌に触れるようにする。化学繊維やウールは避ける。
・ペットを避ける
・添加物の入った洗浄剤(石鹸やシャンプー)は避ける
・掃除はこまめにし、最低でも3日に1回は掃除機をかけてダニやカビを取り除く(リビングなど人やペットがよくいる場所を重点的に。カーペットなど布製の物は特に丁寧に。1m2あたり20秒が目安。掃除機のほか、粘着クリーナーや床用モップでほこりや皮膚のかけらをこまめに取り除きましょう。)
・寝具は週に1回、時間をかけて掃除機をかけましょう。
・エアコンや暖房器具の使い過ぎに注意。室温は冬17~22℃、夏25~28℃を目安に。
・爪は短く清潔に。
・髪の毛の先が肌に触れないようにしましょう。
・かゆい時は、その部分を冷たいタオルなどで冷やす。
・金属の接触アレルギーで悪化することあり、アクセサリーやベルトのバックルが肌に直接触れないようにしましょう。
・海水浴・プールの後は、できるだけ早くシャワーを浴びましょう。プールには塩素、海水には塩分が含まれており、皮膚を刺激します。
・旅行先には、自分専用の使い慣れた石鹸やシャンプーを持参しましょう。薬も忘れずに。
・乱れた食生活を整える
甘いものや肉類、油、脂肪の多い食事の摂りすぎに注意する。外食や偏食による栄養バランスの乱れや、ダイエットなど極端な食事制限による栄養不足を防ぐ。アルコールや香辛料の摂取は控えめに。
・ストレスを溜めない
精神的ストレスも悪化因子の一つです。リラックスした時間をもち、こまめにストレスを発散させましょう。
治療方法
薬物療法

薬物療法の主体はかゆみと炎症をコントロールすることです。
炎症が持続すると皮膚のバリア機能が低下し、かゆみによって皮膚を掻くと皮膚炎も悪化してしまいます。かゆみや湿疹によって、日常生活に支障をきたさないようにするためにも、適切な治療をなるべく早期に行うことが大切です。薬物療法(内服薬・外用剤)によって皮膚の炎症を抑えます。
ステロイド外用剤でしっかりと皮膚の炎症を抑えた後、すぐに治療を止めずに、徐々にステロイド外用剤を塗らない日を増やしていくことで、炎症を抑えた状態を維持することが大切です。
内服薬・外用剤によって皮膚の炎症を抑えます。ステロイド外用剤でしっかりと皮膚の炎症を抑えた後、すぐに治療を止めずに、徐々にステロイド外用剤を塗らない日を増やしていくことで、炎症を抑えた状態を維持することが大切です。
プロアクティブ療法
症状が良くなった後も、計画的に抗炎症薬を塗って悪化を防ぐ治療方法です。
外用療法

保湿外用薬:ヘパリン、尿素、白色ワセリン、プロペト
ステロイド外用薬:5ランクあり
非ステロイド系消炎外用薬:炎症を抑える力はマイルドです。
外用免疫抑制剤
カルシニューリン阻害薬(タクロリムス:プロトピック®︎)
プロトピック軟膏はステロイド外用剤ではないですが、炎症を抑える効果が高い塗り薬です。
ステロイドの長期使用による皮膚の萎縮や毛細血管拡張などの副作用はありません。また、有効成分の分子量が大きいので、皮膚の状態の悪い部分からは吸収されますが、正常な皮膚からはほとんど吸収されません。よって、ステロイド外用剤のように、塗りすぎを心配せずに外用を続けることができます。
炎症を抑える効果は、ミディアム~ストロングクラスのステロイド外用剤と同程度であり、かゆみに対する効果も期待できます。
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
・デルゴシチニブ(コレクチム®︎)
過剰な免疫反応を抑えて皮膚症状を改善する薬剤です。ヤヌスキナーゼファミリー(JAK1、JAK2、JAK3およびTyk2)のすべてのキナーゼ活性を阻害することで、各種サイトカイン刺激により誘発されるT細胞、B細胞、マスト細胞および単球の活性化を抑制してアトピー性皮膚炎の炎症を抑えます。
使用時の刺激感を感じにくく、副作用も少なめで、生後6ヵ月のお子さまから使用できるのが特徴です。
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬
・ジファミラスト(モイゼルト®)
炎症物質の過剰産生を抑えて皮膚の炎症を抑える薬剤です。日本初のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬の外用剤です。PDE4と呼ばれる酵素は、cAMPという物質をAMPに分解する役割があります。
アトピー性皮膚炎の患者さまは、細胞内のcAMPの濃度が低下していることが分かっており、cAMPの量が減ると体内で炎症を引き起こすサイトカインが過剰に作られるため、炎症が悪化します。
PDE4を選択的に阻害することで、炎症性サイトカインなどの化学伝達物質の産生を抑制し、抗炎症作用を発揮します。ステロイド外用剤の維持期に置き換えて使用することで、ステロイド外用剤の使用を減らすことができます。使用時の刺激感を感じにくく、副作用も少なめで、生後3ヵ月のお子さまから使用できるのが特徴です。
内服療法
抗アレルギー薬
かゆみを抑える目的で使用します。
かゆみはヒスタミンという物質が何らかの要因で活性化した際に起こります。
ヒスタミンが過剰に働くとアレルギー反応が起こります。ヒスタミンが作用する部位によって、目がかゆい、鼻水が出る、皮膚が乾燥してかゆいなどといった症状が現れます。
経口免疫抑制薬
他の治療で十分な効果が得られない重症型の患者さまに使用します。
経口ステロイド
急激に症状が悪化した場合や、非常に症状が重いアトピー性皮膚炎に対して短期間使用することがあります。
長期間の使用は避けて、医師が必要と判断した時期にのみ使用します。
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすヤヌスキナーゼ(JAK)に対する阻害作用を示し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することで、アトピー性皮膚炎の症状を改善する薬剤です。経口投与で服用します。
アトピー性皮膚炎には、IL-4(インターロイキン4)、IL-13、IL-31など多くの*サイトカインが関与しています。*サイトカイン:細胞から細胞へ情報を伝達する物質で、本来は体を正常に機能させるために必要なタンパク質です。なんらかの原因で過剰に増えてしまうと、炎症やアレルギー症状などを引き起こします。
炎症の信号を伝える経路のひとつである「JAK-STAT(ジャック・スタット)経路」をブロックすることで、サイトカインが受容体にくっついても炎症やかゆみを引き起こす信号が細胞核に伝わらないようにし、アトピー性皮膚炎の症状に関与する一つあるいは複数のサイトカインの働きを抑えることで、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。
バリシチニブ(オルミエント®︎)
オルミエントはJAK1とJAK2を特に強く抑える作用をもつ1日1回の内服薬です。2歳以上のお子さまから使用できます。
ウパダシチニブ(リンヴォック®)
リンヴォックはJAK1を選択的に阻害する1日1回の内服薬です。12歳以上のお子さまから使用できます。
アブロシチニブ(サイバインコ®)
サイバインコはJAK1を選択的に阻害する1日1回の内服薬です。他のJAK阻害薬と異なり、通常用量から減量したり増量したりすることができます。12歳以上のお子さまから使用できます。
カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン®︎)
臓器移植の拒絶反応を抑制するためのお薬として開発されました。
シクロスポリンは、免疫にかかわるTリンパ球という細胞の働きを抑え、異常な免疫反応を抑える働きがあります。アトピー性皮膚炎も、Tリンパ球の異常な働きが関与していることが分かっているため、アトピー性皮膚炎の治療にも使用されるようになりました。16歳以上で、これまでの治療を継続しても十分な効果が得られないかた、強い炎症を伴う皮疹が広範囲にあるかたに適応があります。
症状が悪化している時に一時的に服用します。1回の治療は長くても3ヵ月です。自己判断で中止しないようにご注意ください。シクロスポリンはお薬の飲み合わせに注意が必要なお薬です。定期的な血圧測定、血液検査が必要なお薬となります。
光線療法

医療機器を用いて、特定の波長の紫外線を照射し、皮膚の炎症を改善する方法です。
昔から日光浴をすると皮膚病が良くなることが知られていました。紫外線には免疫反応を抑える作用があり、うまく利用すれば様々な皮膚病に効果があります。治療に有効な波長は、中波紫外線の中でも308~311nmの波長です。通常の紫外線とは違って、発がん性の高い光や、治療効果の乏しい波長の光はカットされています。アトピー性皮膚炎の他に、乾癬、円形脱毛症などといった慢性皮膚疾患に対して効果が期待できます。
塗り薬や飲み薬だけでは治りにくい難治性のかゆみにも効果的で、ステロイド外用剤の量を減らすことができます。
01
健康保険適用
週1~2回の通院
02
痛みがない
03
副作用が少なく効果が高い
生物学的製剤
バイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品で、生物が合成する物質(タンパク質)を応用して作られた薬のことを指します。
皮膚の内部で免疫細胞が産生する物質の働きを抑えることで、皮膚の炎症を抑え、かゆみや皮疹などの症状を改善するお薬です。注射や点滴で投与します。
ステロイド外用薬で効果が不十分な中等症以上のアトピー性皮膚炎の症状を改善します(ステロイド外用薬との併用療法)。既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に対して使用します。
デュピルマブ(デュピクセント®︎)
デュピクセントはIL-4/13によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎の病態に深く関与するTh2型炎症反応を抑える、世界初のヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体です。
→デュピルマブについて詳しくお知りになりたいかたはこちらへ
ネモリズマブ(ミチーガ®)
ミチーガは、アトピー性皮膚炎のかゆみを誘発するサイトカインである、IL-31をターゲットとした日本初、世界初のヒト化抗ヒトIL‐31受容体Aモノクローナル抗体です。
IL-31は、主にTh2細胞から産生されるサイトカインで、末梢神経に発現するIL-31RA(IL-31受容体)に作用することでかゆみを誘発します。ミチーガはこのIL-31RAに結合することにより、IL-31の結合を阻害し、それに続く細胞内への働きや伝達を阻害することでアトピー性皮膚炎のかゆみを抑制します。
また、IL-31RAは末梢神経のほか、好酸球、好塩基球、肥満細胞などの免疫細胞や角化細胞にも発現していることから、IL-31はかゆみだけでなく、炎症や皮膚のバリア機能低下にも関与していると考えられています。6歳以上のお子さまから使用できます。
トラロキヌマブ(アドトラーザ®)
日本で初めてIL-13を選択的に阻害することで、中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者さまに効果を発揮する生物学的製剤です。
アトピー性皮膚炎の発症に重要な役割を果たす、免疫調節性サイトカインであるIL-13は、IL-13Rα1/IL-4Rα受容体複合体を介してシグナルを伝え、炎症反応を刺激し、痒みの発生に寄与し、正常皮膚のバリア機能に必要な蛋白の産生を阻害します。
アドトラーザは、2型サイトカインであるIL-13と結合し、IL-13とIL-13受容体のα1及びα2サブユニットとの相互作用を阻害します。IL-13を介したシグナル伝達を阻害することにより、アトピー性皮膚炎に対して効果を示します。15歳以上の患者さまから使用できます。
レブリキズマブ(イブグリース®)
アトピー性皮膚炎の病態形成に中心的な役割を果たすIL-13に結合し、IL-13受容体複合体を介してシグナル伝達を阻害する生物学的製剤です。アトピー性皮膚炎の発症にはサイトカインIL-4、IL-5、IL-13が関連していることがわかっています。
中でもIL-13は2型炎症を誘導することで、皮膚バリア機能障害、掻痒、皮膚肥厚、易感染性を引き起こすといわれています。アトピー性皮膚炎の様々な徴候を引き起こす複数の病態生理学的因子を誘導することから、IL-13はアトピー性皮膚炎に関与するメディエーター(伝達物質)と考えられています。
イブグリースは、IL-13に高親和性で結合するヒト化抗ヒトIL-13モノクローナル抗体です。IL-13受容体複合体の形成とその後のシグナル伝達を阻害し、IL-13を介したアトピー性皮膚炎の病態形成を抑制します。
01
ステロイド外用薬で効果が不十分な中等症以上のアトピー性皮膚炎の症状を改善
02
免疫細胞が産生する物質の働きを抑えることで、皮膚症状を改善
03
注射や点滴で投与
よくあるご質問
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは関係がありますか?
かつては食物アレルギーのある子供が、アトピー性皮膚炎を発症すると考えられていましたが、最近では、湿疹があり皮膚のバリア機能が低下している皮膚から食物の成分が入り込むことで、食物アレルギーが発症するという仕組みが解明されています。
アトピー性皮膚炎の子供の乳児期から、スキンケアや保湿対策を行って、湿疹をしっかりと治療してコントロールすることで、食物アレルギーの発症を減少させることができることも実証されています。逆にアトピー性皮膚炎の治療が十分でない場合には、食物アレルギーの発症を減らす効果も低いことがわかっています。
よって、早い時期から正しい治療を行い、皮膚を良い状態に保つことが大切です。
ステロイド外用剤で皮膚に黒ずみ(色素沈着)がおこりませんか?
黒ずみ(炎症後色素沈着)は薬剤の副作用ではなく、皮膚の炎症が長く続いたことによるもので、湿疹の治療により改善します。
ステロイド外用剤を長期に使用すると、どんな副作用が起こりますか?
まれにお肌が薄くなったり(ひ薄化)、ニキビ(毛嚢炎)ができやすくなることがあります。
お薬の使用間隔を患者さまの状態に応じて調整しながら減らすことで、このような副作用を避けることができます。
食事はどんなことに気をつければ良いですか?どんなものを摂取すると良いですか?
アレルギーと関係の深い免疫機能は、人間の腸に集中しているため、腸内環境を整えることが非常に大切です。
腸内細菌のバランスが崩れると、ヒスタミンが過剰に分泌され、かゆみの症状がより悪化してしまいます。かゆみの症状を和らげるためには、腸内環境を整え、ヒスタミンの分泌を抑えなくてはなりません。よって食物からのアプローチは有効です。
摂った方が良い食材
①発酵食品:ヨーグルト、味噌、納豆、キムチ、ぬか漬け、かつお節
腸内環境を整えるためには、腸内の善玉菌を増やすことが重要。 発酵食品には善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌が生きたまま含まれており有効。
②根菜類:ごぼう、人参、レンコンなど 根菜類に多く含まれる食物繊維は善玉菌のエサになり、善玉菌の働きを活性化してくれます。旬の野菜、豆類、きのこ、海藻類、ネバネバ食品も食物繊維が豊富です。
③甜茶(てんちゃ)甜茶には、ヒスタミンの分泌を抑える働きがあります。予防的に飲むのがおすすめです。
アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐために、避けた方が良い食材はありますか?
摂りすぎない方が良い食材として、下記のものが挙げられます。
①高脂肪食:揚げ物、ステーキ、ケーキ、ドーナツ、クッキー、菓子パンなど 食べ過ぎて消化しきれなかった脂肪分は、腸内の悪玉菌のエサになり、腸内細菌のバランスを崩してしまいます。揚げ物、脂身の多い肉、ステーキは控えめに。
②加工食品:ハム、ソーセージ、スナック菓子、冷凍食品、コンビニ弁当、カップラーメンなど 加工食品に含まれることが多い食品添加物(保存料、着色料、香料、防腐剤、安定剤など)は、腸内細菌のバランスを崩します。なるべく食品添加物が少ないものを選びましょう。
③アルコール類・タバコ:アルコールを肝臓で分解するときに発生するアセトアルデヒドが、皮膚の痒みや赤みを悪化させてしまいます。また血行が良くなることで、痒みや熱感がひどくなることもあります。
乳幼児期の紫外線対策はどうすればよいですか?
過剰な紫外線は、将来の健康や美容にさまざまな悪影響を与えます。適切な紫外線対策を行いましょう。
紫外線を過剰に浴びると、しわやしみなどの皮膚の老化を早め、さらには将来の皮膚がんの発生、白内障や翼状片などの目の病気が起こりやすくなるので、強い日焼けをしないように心がけましょう。
急激な日焼けは皮膚炎を悪化させることがあるので、予防のために強い日差しは避けましょう。
一方で、紫外線は丈夫な骨を作るビタミンDの生成に必要ですので、過度に心配するあまり外出を控えるのも好ましくありません。
ステロイド外用薬を塗って、症状が良くなっても薬を塗る必要があるのは何故ですか?
アトピー性皮膚炎は、皮膚の炎症をなるべく早く抑えないと悪化を繰り返して長期化してしまいます。ステロイド外用薬を塗って一時的に症状が良くなり、皮膚の表面がきれいになっても、皮膚の内部には炎症が残っていることが多いため、医師の指示された期間は塗り続けてください。自己判断で塗る量を減らしたり、止めてしまうと、再び症状は悪化します。
汗をかいた時の具体的な対処方法を教えてください。
皮膚に湿疹や炎症がある状態で、汗をかいてそのまま放っておくと、皮膚がかぶれて症状が悪化する原因になるので、汗対策は重要です。
汗をかいたら、こまめに拭いたり、シャワーなどで洗い流してください。汗や汚れをなるべく早く洗い落とすためには、1日2回の入浴やシャワーが有効だとされています。運動をした後や暑い時期などは、入浴やシャワーの回数を増やすと良いでしょう。
また、入浴やシャワーの後は、肌の脂分も洗い流されて乾燥しやすくなっているので、保湿も忘れずに行ってください。汗は放置すると悪化因子になりますが、湿疹が良くなると汗をかくようになりますので、汗をかくことを忌み嫌う必要はありません。汗を沢山かくことは良くなった証拠でもあります。
プロアクティブ療法とはどのような治療法ですか?
プロアクティブ療法とは、ステロイド外用薬を使用して皮膚をつるつるの状態にしてから、薬の使用回数を減らしていって、副作用を最小限におさえる方法です。
ステロイド外用薬によって皮膚の炎症をしずめて、見た目がつるつるになった後も、数日に1回(週に2回など)ステロイド外用薬を予防的に使用することで、つるつるの状態を長期間維持する方法です。
JAK阻害薬や生物学的製剤は治療薬が高額ですが、医療費の助成などはありますか?
生物学的製剤の皮下注射およびJAK阻害薬の飲み薬は中等度から重症のアトピー性皮膚炎に対して効果が期待できる薬剤ですが、現時点では保険診療の3割負担の薬剤費でも高額の治療薬のため、以下の高額医療費制度などの医療費助成制度を使っていただくことをご案内しています。
①高額医療費制度
医療機関や薬局の窓口で支払った1ヵ月間の医療費が一定額を超えた場合に、その分の金額が支給される制度です。同一の医療保険に加入する家族は自己負担額を合算して申請することができます。また、直近の12ヵ月間で同じ医療保険に加入している家族間(同一世帯)で高額医療費の支給を3回以上受けている場合は4回目からの自己負担限度額がさらに低くなります。
お問い合わせ先:加入されている医療保険
②医療費控除
1年間にかかった医療費の総額が10万円を超えた場合、確定申告の際に手続きを行うことで税金の一部が減額される制度です。
お問い合わせ先:最寄りの税務署
③付加給付
企業などの健康保険組合や共済組合などによって独自の給付制度を設けている場合は一定額を超えた分が付加給付として給付されます。
お問い合わせ先:加入されている健康保険組合など
④自治体の医療費助成(高校生まで)
自治体によっては高校生まで所得制限なしで保険診療の医療費が助成されます。
石鹸やシャンプーは、どのようなものを使えばよいですか。
添加物などが入っていない、皮膚と同じ弱酸性の普通の石鹸とシャンプーでかまいません。
必ずしもアトピー性皮膚炎用として市販されている特殊なものを選ぶ必要はなく、石鹸の形状は固形でも液体でも大丈夫です。泡を立てることが大事なので、よく泡立つ、身体に合うものを使用してください。
また、すすぎ残しがあると皮膚が荒れる原因になりますので、しっかりと洗い流してください。