脂漏性皮膚炎

症状
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは、皮脂の分泌が盛んな部位、例えば頭や髪の毛の生え際、顔面などにできる湿疹のことを指します。
患部は赤みを帯び、乾燥したうろこ状のフケや黄色味がかった湿り気があるフケが出ます。油っぽい細かい皮がこびりついて、かさぶたのようになることもあります。痛みはなく、基本、かゆみもありませんが、軽微なかゆみを伴う場合もあります。
新生児期から乳児期に見られる乳児型と、思春期以降の成人に見られる成人型があります。乳児型の脂漏性皮膚炎のほとんどは一過的なもので、正しいスキンケアを行うことで、生後12ヵ月頃には自然治癒する傾向にあります。成人型の脂漏性皮膚炎の場合は、一度発症すると、良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的な経過をたどります。自然治癒することは稀なケースですので、医療機関での適切な治療が必要です。
原因
脂漏性皮膚炎の原因としては、マラセチア菌というカビの一種が関係していると考えられています。
マラセチア菌は脂が好きなカビです。脂漏性皮膚炎はマラセチア菌が、皮脂に含まれる成分「トリグリセド」を遊離脂肪酸へと分解し、その遊離脂肪酸による刺激や菌に対する皮膚の反応により、湿疹反応が生じたものです。
皮脂の過剰分泌
皮脂腺が活発に働くことで、皮脂が過剰に分泌されます。
マラセチア菌
皮膚の常在菌であるマラセチア菌が皮脂を分解し、炎症を引き起こすことがあります。
ホルモンバランス
特に男性ホルモン(アンドロゲン)の影響で皮脂分泌が増加します。

ストレスや生活習慣
ストレス、不規則な生活、栄養不足などが悪化要因となります。
日常生活の注意点
皮脂の詰まりやすい部位、つまり皮脂の分泌が多い部位を清潔に保つことがポイントです。正しい洗顔、洗髪を行って、皮脂汚れを溜めないように、日々気をつけましょう。
なかなか症状が改善されない場合、シャンプーや石鹸を見直す必要があるかもしれません。油分を含む整髪料、シャンプー、リンスなどの使用はできるだけ避け、抗真菌薬を含んだシャンプー、リンス、石鹸に変えることが頭皮環境の改善に役立つことがあります。
また、睡眠不足や過度なストレスは、皮膚症状が悪化する原因になります。十分な睡眠やリフレッシュの時間をしっかり取り、ストレスを溜めないようにしましょう。
当院では、患者さまに頭の洗い方やシャンプーの選び方、食生活や日常生活でのアドバイスをさせていただきます。ちょっとした心がけで、頭皮の状態を健やかに保つことができます。
脂漏性皮膚炎は慢性的な症状ですが、適切な治療とケアで症状をコントロールすることが可能です。
症状が続く場合は、皮膚科専門医に相談することをおすすめします。
治療方法
薬物療法(保険診療)

ステロイドの外用によって、炎症を抑えます。顔面や体幹には軟膏、頭皮には液体のローションを外用します。基本的には、短期間での改善が見られることが多いです。長期間の外用となると、ステロイドの副作用が出ることがあるので、注意が必要です。
時に抗真菌外用剤を用いて、マラセチア菌の増殖を抑えます。
場合によっては飲み薬を併用して、内側からの皮脂の分泌を抑えることもあります。
ステロイド外用剤
抗真菌外用剤
皮脂分泌を抑える内服薬
適切なスキンケア
適切な洗顔やシャンプーを行い、皮脂をコントロールします。
生活習慣の改善
バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスの解消が重要です。
よくあるご質問
脂漏性皮膚炎はどれくらいの期間で治りますか?
脂漏性皮膚炎は慢性的な疾患であり、完全に治すことは難しいですが、適切な治療とケアで落ち着いた状態にコントロールすることは可能です。
治療期間は個人差がありますが、最低でも数週間から数ヵ月かかることが一般的です。
整髪剤は使っても良いですか?
整髪料やヘアクリームを使用しても構いませんが、症状が悪化する場合は使用を控えましょう。
使用する際は、毛先に少量だけつけるようにしましょう。
毎日、洗顔や入浴は行っても良いですか?
毎日洗顔や入浴を行っても問題ありません。
ただし、強くこすらず、優しく洗うことが重要です。また、適切な洗浄剤を使用し、しっかりとすすぐことが大切です。
シャンプーする際の注意点はありますか?
頭皮に優しいシャンプーを使用し、しっかりとすすぐことが重要です。
過剰なマラセチア菌を減らす抗真菌成分が含まれた薬用シャンプーを使用するとさらに効果的です。
パーマやヘアカラーはしても良いですか?
パーマ液やヘアカラーの液は頭皮に刺激を与えるため、症状が強いときには避けましょう。
美容師に脂漏性皮膚炎について伝え、頭皮に強い刺激を与えないようにお願いしてください。
プールや温泉に入っても良いですか?
プールに入った後は塩素をしっかり洗い流し、温泉では入浴後にきれいに洗い流すことが重要です。
露天風呂では枯葉などの汚れが皮膚に残ることがあるため、注意が必要です。