

ほくろの症状

ほくろが気になる方へ
皮膚科専門医による早期診断
ほくろ(色素性母斑)は、一般的に生まれつきのものではなく(後天性)、成長していく過程で母斑細胞(色素細胞に似ている)が皮膚または皮膚の下で増殖した状態を指します。自然発生した良性の母斑細胞の集まりです。
皮膚に褐色~黒色の色素斑が生じ、表面は平坦または隆起状になります(一部では、色素のないほくろも存在します)。ほくろの発生原因は明らかになっていません。良性腫瘍のほくろは、健康に悪影響はないので特に心配はありません。
なお、ほくろによく似た症状に悪性黒色腫(メラノーマ)がありますが、こちらは皮膚がんの一種です。ほくろとメラノーマの区別については医師による鑑別が必要なので、早めの発見と、メラノーマの場合は医療機関での治療が必要です。
ほくろの検査・診断方法としては、ダーモスコープという皮膚の顕微鏡を用いた「ダーモスコピー」という検査法が一般的です。また、ほくろが遺伝することは医学的には認められていません。
このような場合はご相談ください
- 目立つほくろがある
- ほくろが悪性でないか気になる
- 治療したいが、傷跡は残したくない・・・
- 医療機関でほくろを除去したい
ほくろの原因
ほくろができる原因は明らかではありません。メラノサイトとメラニン色素が皮膚内の1カ所に集まって増殖する自然発生的なできものですが、原因は解明されていません。食生活などの生活習慣やホルモンバランス、お肌を触りすぎるといった外的因子によって生じるものではありません。ただし、ほくろを刺激すると大きくなったり変形したりする可能性はあります。
ほくろには、黒子、母斑細胞母斑、青色母斑などのいくつかの種類があります。黒子は直径数ミリの褐色~黒色の小さな点で、メラノサイト(色素細胞)で作られるメラニン色素が表皮内で増加することで生じます。メラニン色素は、紫外線によって表皮細胞の遺伝子が傷つかないように保護する役割を果たすもので、メラノサイトに紫外線が当たると生成されます。
母斑細胞母斑は、神経堤細胞がメラノサイトまたはSchwann細胞に分化する過程で、どちらにも分化できず中途半端な状態になった細胞(母斑細胞)が明瞭化することでできます。この母斑細胞にもメラニン色素が含まれています。母斑細胞が皮膚のどの位置に集まっているかで、病理学的に境界母斑・複合母斑・真皮内母斑の3種類に分類されます。青色母斑は、皮膚の深い位置の真皮内に、メラニン色素を含む青色母斑細胞が集まることで明瞭化します。悪性黒色腫(メラノーマ)の場合は、メラノサイトが増殖し続ける、がん化した腫瘍と考えられています。
ほくろの診断


皮膚科で、ダーモスコープというライト付きの拡大鏡を用いた検査(ダーモスコピー)を行います。ほくろの診断では、良性と悪性の判別が最も大切です。ほくろをダーマスコープで観察することにより、良性の母斑細胞母斑か、メラノーマか、あるいは血豆の色素沈着なのかなどを識別することが可能です。良性と考えられるものは経過観察となります。ただし、直径6mmを超えるなど比較的大きなほくろの場合、美容や悪化リスクを考慮したうえで除去処置(手術)に進むことがあります。
悪性黒色腫を疑う所見としてはABCDEが有名です。A:asymmetry(左右非対称、不規則形:ほくろの形が非対称である)、B:border irregularity(境界不整:縁がギザギザしていたり、輪郭が不明瞭である)、C: color variegation(色調が濃淡多彩:色がまだらで、濃淡不均一)、D: diameter(大きい、直径6mm以上:直径6mm以上の大きさである)、E:evolution(形状が変化してくる。大きくなったり、表面が隆起してきたり、色調が変化してくることです)メラノーマの疑いがある場合は、より正確な確定診断を行うために皮膚生検を行うことがあります。
腫瘍を部分的または全体的に切除して、皮膚組織を採取して顕微鏡で調べます。ダーマスコピーは保険適用となります。
ほくろの分類
後天性の色素性母斑は、
一般に下記のように分類されます。
Unna母斑
思春期以降、20~30歳代で主に体幹を中心に出現します。直径1cm程度のものが多く、表面は顆粒状で、柔らかく、色は黒色〜茶褐色であることが多いです。
Miescher母斑
顔と頭髪部を中心に出現します。乳児期にはほとんどなく、小児期に平坦な病変として出現し、徐々に隆起します。病変の多くは1cm未満でドーム状に隆起する丘疹で、中心部は黒色で辺縁に行くに従って、黒色から茶色に、徐々に正常皮膚色に近づきます。表面は平滑で光沢があることが多く、毛が生えていることもよくあります。
年齢と共に徐々に色が薄くなり、肌色に近くなるものもあります。
Spitz母斑
小児を含む若年者に好発し、色は赤~黒色の1cm未満の病変で、周囲との境界が明瞭で、表面がカサカサしていることがあります。急速に増大することがありますが、一定の大きさになると成長が停止します。悪性腫瘍(悪性黒色腫)との鑑別が問題になることがあり、基本的には切除の対象となります。
Clark母斑
体幹や四肢によく多発し、楕円形であることが多く、中央の色がやや濃く、外側に向かって色が徐々に薄くなる傾向があります。中心部が隆起していることもあります。足の裏や手のひらにも好発します。大きさは直径1cm以下であることが多いです。その他特殊なものに青色母斑、獣皮様母斑が挙げられます。
青色母斑
比較的に発症頻度は高く、人口の約3%に見られます。やや固く触れる10mm以下の半球状の青色結節ですが、実際には非常に濃い青色で黒色に見えることが多いです。
獣皮様母斑
生まれつき見られるほくろで、巨大なものは10cm以上にもなることがあります。ほくろから剛毛が生えているため、「獣皮様母斑」と呼ばれています。悪性黒色腫が発生しやすいため、手術的に完全に切除を行います。一部を除き、特に悪性化するリスクは高くありません。放置しても問題はありませんが、機能的、整容的に治療を希望された場合に治療を行います。
「足の裏のほくろは注意が必要」といわれます。ほくろの悪性化のリスクは通常の肌と変わりませんが、悪性黒色腫(メラノーマ)が足底に発生することが多いことは良く知られています。足底に急に黒いシミができた場合は放置せずに、なるべく早めに皮膚科を受診するようにしましょう。
ほくろとよく似た病気
皮膚線維種
手足に好発する、黒~褐色の固いしこりのようなできものです。虫さされや外傷がきっかけで出現することもあります。
軟性線維腫
首やわき、陰股部などの摩擦しやすい部分によく見られる、肌色でいぼに似た、表面にしわのある隆起性の病変です。加齢や摩擦に伴って、徐々に増えてきます。首周りにできる小さいものは「アクロコルドン」と呼ぶことがあります。大きなものはUnna母斑と似ていることがあります。炭酸ガスレーザーや液体窒素による冷凍凝固術で治療を行います。
神経線維種
末梢神経から発生する良性の皮膚腫瘍です。レックリングハウゼン病(神経線維腫症I型)において多発することでも知られています。健常な方でも単発で発生することがあり、Miescher母斑と似ていることがあります。
脂漏性角化症(老人性疣贅、イボ)
盛り上がりのある茶色いシミで『老人性いぼ』とも呼ばれます。このいぼはウイルスが原因ではなく、紫外線によるお肌の老化が原因と考えられており、中高年以降の時期に、角質が硬く厚くなって膨らんでいます。老人性色素斑から発生することも多く見られます。顔やこめかみ、首周りなどといった露出部によくできます。悪性化することはありませんが、かゆみなどの原因となることがあります。脂漏性角化症は炭酸ガスレーザーにて簡単に治療することができます。その他、冷凍凝固術にて治療することも可能です。
基底細胞がん
顔面によくできる皮膚がんで、最も頻度の高いものです。ほくろと酷似するものもあり、皮膚生検なども考慮しながら、診査・診断を行います。臨床的には、「結節・潰瘍型」、「表在型」、「斑状・強皮症型」、「破壊型」、「Pinkus型」などに分類されます。結節・潰瘍型の初期病変はほくろと似ていますので注意が必要です。ダーモスコープと呼ばれる皮膚の顕微鏡で検査を行います。ダーモスコープで観察すると、樹枝状血管、松葉状構造、葉状構造などの特徴的な所見が見られます。手術的に完全に切除する必要があり、場合によっては総合病院・大学病院に紹介となることがあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
最も注意すべき皮膚腫瘍です。転移しやすく、命にかかわる皮膚がんの1つです。放射線治療や化学療法の効果が良くない、予後の悪い疾患です。そのため、早期に発見し、確実に治療を行うことが重要です。日本人では、足底に多く発生します。
もし診断された場合は、速やかに大学病院やがんセンターなどを紹介させて頂きます。
実際には皮膚顕微鏡であるダーモスコープを用いて病変の観察を行います。診断に役立つ所見の1つとして、足の裏などに数多く刻まれた皮溝と呼ばれる細い筋と、皮溝と皮溝の間で丘のように高くなった皮丘の観察が、診断に役立ちます。ほくろの場合は、皮溝を中心に黒い色素が見られ、悪性黒色腫では逆に、皮丘に黒い色素が多数が見られます。メラノーマは診断後速やかに、大学病院などの大病院に紹介させて頂きます。
日常生活の注意点
ほくろの予防や注意事項
ほくろは自然にできるもので、良性であれば人体に特に問題はありません。しかし、ほくろを頻繁にいじったり、紫外線を当てたりすると、拡大したり変形したりする可能性があります。民間療法などで無理にほくろを取ろうとすることもリスクが大きいです。気になる場合は、皮膚科専門医にご相談ください。普段気をつけて頂きたいことは、屋外スポーツや野外活動をする際に日焼け止めを使用し、ほくろを紫外線から保護することです。汗をかいたらこまめに日焼け止めを塗り直しましょう。また、ほくろだと思っていたら、皮膚がん(悪性黒色腫)だったというケースが稀にあります。ほくろを観察していて異変を感じたら、早めにご相談ください。
当院の治療方法

ほくろのサイズや部位から、皮膚科専門医のもと最適な治療法を選択いたします。

炭酸ガスレーザーによる「蒸散法」
レーザー治療は、施術前に局所麻酔を行うため痛みもなく、数分程度で終わります。炭酸ガスレーザーをほくろの部分に照射すると、瞬間的に患部の組織が蒸散され、除去することができます。周囲の皮膚にダメージを与えず、傷跡も残りにくいといったメリットがあります。小さなほくろだと、跡形もなくきれいになる場合もありますが、大きくかつ皮膚の深部までほくろのある方ですと、ニキビ跡のような少し陥没した傷跡が定着する場合もあります(この陥没は表皮化するにつれて徐々に改善してきます)。また、治療後は紫外線を避けて、色素沈着の予防をしっかり行うことが必要です。
- 周囲の皮膚へのダメージが少ない
- 術後のテーピングが必要
電気メスによる「切開凝固法」
電気メスを用いた方法は、特に盛り上がったほくろの除去に適しています。はじめに局所麻酔を行いますので、施術中の痛みはほとんどありません。電気メスによる治療は、ほくろに向かって逆ピラミッド型にメスを入れ、根元からくり抜くような方法で行います。一般にレーザー治療より再発の可能性が少ないといわれています。もっとも、ほくろの根が深いと、再発の可能性はあります。ほくろのサイズが大きい場合、完全に取り除くと皮膚がくぼんでしまうため、色素がある程度残っている状態で終了することもあります。リスクについて十分に説明し、患者様がよく理解されたうえで、施術をお受けになることをおすすめいたします。
- 周囲の皮膚へのダメージが比較的少ない
- 術後のテーピングが必要
くりぬき法
くりぬき法とは、ほくろの形に添って、円形状にほくろをくり抜く手法です。メスやトレパン(パンチ:手術用の医療機器)を用いて行います。ほくろの表面だけでなく、ほくろの深部までアプローチできますので、奥深くまで根を張っているタイプのほくろに特に適しています。ごく小さなほくろの場合は、縫合も必要なく、皮膚への負担が少ない方法といえます。やや大きなほくろの場合は、縫合することで傷跡が残るリスクを軽減することができます。ほくろのサイズが大きい場合や、深い場合、切開範囲が大きくなった場合には、巾着状に縫合して縫い縮めることもあります。切除縫合法よりも切開の範囲や傷跡が小さくて済むため、皮膚へのダメージや負担を最小限に抑えながら、処置を行うことができます。
- 再発のリスクが少ない
- 傷跡が目立ちにくい
切除縫合法
切除縫合法は、メラニン色素の集合体であるほくろの組織を、周辺も含めて根本から切除する手術法です。レーザー手術よりも、より深くまでアプローチできるため、深く根を張ったほくろに対しても有効な方法です。また、くりぬき法に比べて広範囲にしっかりと切除できますので、再発の可能性が低くなります。切除した後は、丁寧に縫合します。縫合することによって、一時的に縫合跡が残ってしまいますが、いずれは6~12ヵ月で目立ちにくくなってきます。おおよそ7~10日で抜糸の処置を行います。その他、皮弁法という特殊な術式を行う場合もあります。
- 大きいほくろの除去に向いている
- 再発のリスクが少ない
施術の流れ
- 1 診察
- はじめに医師による診査・診断を行います。ほくろに悪性所見がないか、ダーモスコピーによる検査で確認を行い、治療可能かどうかを判断いたします。
- 2 予約
- 治療可能と診断された場合、治療方法のご説明を行い、ご予約をお取りします。
- 3 処置
- 局所麻酔を行ってから、処置・手術等を行います。
- 4 アフターケアと説明
- 軟膏を付けガーゼや絆創膏で傷を保護します。術後のアフターケアの方法を詳しくご説明いたします。
- 5 アフターフォロー
- 約一週間後に診察にてご来院頂きます。
よくあるご質問
ほくろはがん化することはありますか?
通常一般的なほくろ(母斑細胞母斑)ががん化する可能性は、その他の皮膚と変わりません。ただし、獣皮様母斑と呼ばれる、巨大で有毛性の母斑細胞母斑からは悪性腫瘍が発症する頻度が高いことが分かっています。まずは、ほくろをきちんと診査・診断することが大切です。ほくろの診断はダーモスコープと呼ばれる皮膚顕微鏡にて行います。もし気になるほくろのような色素斑がある方は、一度皮膚科専門医にご相談ください。
痛みはありますか?
術前に局所麻酔を行いますので、治療中は痛みはありません。触られている感覚は残ります。麻酔薬を注入する時に少し痛みはありますが、極細の針を用いますので、痛みを最小限にすることが可能です。痛みに弱い方の場合は、クーリングや振動による機器を併用することもできますので、お気軽にお申し付けください。
いぼやほくろはどれくらい通えばいいですか?
いぼやほくろは基本的に1回の治療で取り切れます。約1~2週間後に診察が必要となります。
ほくろの治療は保険適用ですか?
ほくろにより、何らかの機能的問題がある、あるいは症状がある場合に保険適用となります。たとえば、洋服を脱ぐ時に引っかかる、体を洗う時に爪があたって血が出ることがある、まぶたにあって視界の邪魔になる、髭を剃る時に引っかかる、皮膚がんの可能性がある、など疾患としての問題がある場合が対象となります。前述のようなほくろの症状がある場合、治療の対象となります。症例によって、これら以外の場合でも保険適用となることがあります。なお、ほくろ(=母斑細胞母斑)の近縁疾患である「扁平母斑」や「脂腺母斑」の治療は保険適用です。
※完全な美容目的の場合は保険がきかず、自己負担となりますのでご了承ください。
治療後に飲酒や運動することはできますか?
手術後は3日間は控えて頂たほうが望ましいです。可能であれば1週間程度控えることをおすすめいたします。
処置後の注意点を教えてください。
処置・手術後は、当日は患部を濡らさないようにご注意ください。翌日からシャワーが可能です。湯船につかるのは、医師の許可がおりてからでお願いします。傷を清潔に保ち、テーピングを行うなど、傷に負担をかけずに刺激や紫外線から守ることが大切です。日焼けをすると、ほくろ除去部分がシミの原因になりますので予防対策が重要です。除去後、新しい表皮ができるまでの間、ばい菌が入らないよう、綿棒で軟膏を塗り、保護用の遮光(肌色)テープを貼って頂きます。傷を清潔に保って頂くことと、傷を乾かさずに湿潤環境におくことが重要です。患部以外にメイクをして頂くことは可能ですが、患部にはメイクを直接すりこまないようにご注意願います。
ほくろを一度に何個も除去することはできますか?
一回の治療でおおよそ10個以下でお願いしております。局所麻酔の使用量の上限がございますし、一つひとつの大きさにもよりますので、あくまで目安となります。一度に多くの処置を行いますと、直後はそれだけ凹みができますし、テーピングの貼り替えも煩雑となります。最初は目立たない端の部分から治療を受けて頂いて、問題なければ後日に別の部位を治療することをおすすめいたします。
目の近くのほくろを取ることはできますか?
はい、可能です。目の近くのまぶたは、治療した場合に、傷が残りにくい傾向があります。目の際のホクロの場合は、コンタクトシェルという特殊なコンタクトレンズを装着し、安全に治療を行うことが可能です。
レーザーで皮膚が陥没することはありませんか?
元々小さいほくろであれば跡形もなく治る場合もありますが、大きければ大きいものほど陥没する可能性はございます。もっとも、元のほくろの面積よりも小さい面積の凹みになり、黒い大きな盛り上がりがなくなるので、凹んでもほくろのある状態よりはきれいになる可能性が高いです。また、ほくろやいぼは盛り上がっているものは放置しておくとどんどん大きくなる場合もあるため、大きくなってから処置をすると大きなくぼみになりますが、小さいうちに行えば小さなくぼみで済みますので、取ってしまいたいほくろがあるならば早いうちに取った方が好ましいです。
顔に大きなほくろがあり気になっています。大きなほくろはレーザーで取れますか?
おおよそ8mm以上の大きなほくろは切除縫合術を行うことが多いです。大きいほくろの場合は、レーザーでの治療は傷跡が目立ってしまうことがあります。皮膚ごと切る手術の方が、レーザーよりも術後の状態がきれいで目立ちにくいです。傷跡は6ヵ月~1年位で目立ちにくくなります。約1週間後の抜糸までは傷跡は濡らさないようにして頂きます。その後は日常生活に特に支障はありません。
注意点・リスク・副作用
主な副作用・・・内出血、傷跡の赤み、色素沈着、傷跡、ケロイド、
陥凹性瘢痕、再発
※症状、肌質により効果に差があります。